母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。島に高校がないため、4人はフェリーで本土に通う。「幻の脚本」の謎、未婚の母の涙、Iターン青年の後悔、島を背負う大人たちの覚悟、そして、自らの淡い恋心。故郷を巣立つ前に知った大切なこと―すべてが詰まった傑作書き下ろし長編。直木賞受賞、第一作。
島はぼくらと
「島はぼくらと」 の評価/クチコミ





数年前から、島に旅行に行くことがマイブームです。
島旅のよいところは、のどかでのんびりできるところです。
なので、島を題材にしたこちらのお話は、旅行者ではなく、島で暮らす人々の気持ちをしるために楽しみでした。
島で暮らすということは、このお話のように、気の合う友達や好きな人ができる人は、密に交流できて、とてもうらやましいですが、その反面、気が合う人がいなかったらと思うと、つらそうです。
都会だったら、いろんな選択肢があるけど、島だとそういう風にもいきません。
そこがよいところでもあり、不便なことでもあり、どちらがよいのか…。
友人で、ボランティアで町おこしをしている人がいて、仕事にしたいと思っているので、この本をすすめてみようと思います。
私はもうすぐ出産なので、素敵な母子手帳の自治体はうらやましいです。
私の自治体は、たぶん普通の母子手帳ですが、実家の友達の母子手帳を見たら、すごくテンションの下がるデザインの表紙で、愛着がわかないだろうなぁと思いました。
辻村さんの本は暗いイメージを持つことが多かったのですが、これはさわやかでよかったです。





辻村深月という事で構えてしまう人にとっては寧ろ変化球かも知れませんがストレートな青春小説でした。しかしながらところどころに注視しないと見逃してしまうようなポイントがあるので、登場人物と同じような世代の方より、人生経験を積み始めたであろうもう少し上の20~30代をターゲットにしているのかも知れません。
「島」を使った小さな世界が物語の主幹になっています。コミュニケーションの大切さと煩わしさなどは都会とはまた違う問題のようです。生まれも育ちも東京の私にとっては「本質的には理解出来ないかも知れない」と感じると同時に疎外感のような物がありました。
飽くまで島で青春時代を過ごす若者が主体の物語で、微笑ましく思ったり懐かしく思ったりもするのですが、このように客観的に今の状況と照らし合わせたり出来たのは大きな収穫でした。この毒気は甘酸っぱさ一辺倒になりがちな青春小説においてスパイスになっているのかも知れません。
やや癖の強い辻村深月節もこの小説ならば比較的マイルドなので、入門編としても最適だと思います。





瀬戸内海の離島に住む男女各2名の高校生を中心に島の生活とこの高校生たちの日常をほんわかと書き綴った作品になっていてとても読みやすい作品だったと思います。島には高校がなく4人(朱里・衣花・新・源樹)は本土の高校に通います。通学のフェリーの時間の関係で帰宅部です。もちろん通学はこのせいでいつも登下校は一緒なのです。だれの目から見てもとびきり美人できれいな衣花は地元の網元の跡取り娘です。この子は島に残り網元の後を取らなければならず島から出る事が出来ない子でした。季節限定会社の社長令嬢の朱里とIターンし家がリゾートホテルの経営をしている源樹と文才のある新をめぐって、島の色々な角度が読める作品です。例えば町長がアクションを起こし町おこしが始まったり、外から来た脚本家の男の幻の脚本さがしなど読んでいるうちに本の中に入り込んでしまう嫌みのない書き方が年齢に関係なくみんなに読めるのではないかなと感じました。4人の高校生の感情の動きにも目が行く作品です。





青春、恋愛、ミステリー、冒険、ノスタルジー、社会問題…この本にはその全てが詰まっています!物語の核は小さな島の男女4人の高校同級生。彼らがそれぞれの関係性や家の事情、進路に悩みながら成長していく姿が丁寧に描かれています。勿論辻村さんのお話ですからそれだけじゃありません。島という限られた空間の中で起こる小さなミステリーもこの物語の重要なスパイスです。さり気なく島での生活の難しさや都会とのズレも描かれていて、田舎出身の私からしても「よく取材してるなぁ」と感心してしまいました。登場人物の繊細でヒヤリと冷たい心理描写などは本当に流石です。青春なんてとうの昔の私ですが、すっかり物語に引き込まれてしまいました。とにかく主要登場人物4人の関係性が素敵で、特に『兄弟』の話なんかはもう…!辻村ファンにもそうでない人にもきっと楽しくスッキリ読んで頂ける物語だと思います。作中には過去の辻村作品にも登場している”あの人”も現れたりして、辻村ファンには嬉しい展開にもなっていますよ!





瀬戸内の小さな離島「冴島」。
フェリーを使って本土の高校に通う朱里、網元のクールビューティー衣花、演劇青年一途の新、ホテル経営で東京から父と来た源樹。
小さな島ならではの風習や付き合い。Iターンでやってきたシングルマザーや青年。
大人たちに囲まれ、たくさんの眼に見守られ、島で育ち、島を思いながら、高校を卒業したら島から離れていく・・・。
そんな微妙な年ごろ4人を、しっかりと丁寧に描いています。ストーリーが淡々としていても、本をめくる手が止められないのは、彼ら4人と彼らが暮らす島の魅力に惹きつけられるから。
最後、衣花も朱里もかっこいい!!
ラストまで読んでから「島はぼくらと」のタイトルにもう一度想いを馳せ、表紙のイラストを見かえせば、爽やかな風と潮の香りの余韻を感じます。
新と源樹の二人はどうしているだろう。今頃、冴島はどうなっているだろう。そんな温かな想像力をかきたてられる。
実力ある本というのは素直な本なのだなぁと実感。





表紙の少女チックな絵柄を見ての第一印象はラノベかな?でした。本屋大賞の中にはラノベ風の本もかなり入ってきているので、ラノベ苦手な私的には失敗したかな?と思ってしまいました。
でも、そんな中身とはうらはらに中身は実に奥深いものでした。
ある小島で生活をする高校生たち。卒業と同時に島から出てしまう生徒がほとんどで、その生徒たちの複雑な思いが甘酸っぱい青春独特の感情と入り交じってとても上手に細やかに描き出されていると思います。
そして母親たちの母子手帳への思い。子を持つ母としてはこのくだりはぐっときました。18年で島から出て行ってしまうであろう我が子への書き込みで真っ黒になった母子手帳、島の母親の覚悟が読み取れます。
一方でいろんな事情を持って島に入植してくる人たちの物語も。島という閉鎖空間でなじむことができずに去ってしまうものが多い中、理解した上で懸命にとけこみ生活を築いていこうとする人も思いにひきこまれました。
この短い話の中でこんなに深い物語を織り上げることができていて、すばらしい一冊だと思いました。
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