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悪人

悪人

悪人

吉田修一

2008年度本屋大賞部門
第4位

クチコミ( 5

九州地方に珍しく雪が降った夜、土木作業員の清水祐一は、携帯サイトで知り合った女性を殺害してしまう。母親に捨てられ、幼くして祖父母に引き取られた。ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。そんな彼を殺人に走らせたものとは、一体何か―。

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「悪人」 の評価/クチコミ

奈緒さんの評価:

携帯もスマホも無かった時代に、ましてや誰もがインターネットの登場・普及すら予想していなかった時代に、この小説に描かれているような出会い系サイトの登場を想像した人はいたんでしょうか。少なくとも私のような年代の人間にとって、このようなサイトが存在することすら驚きですね。

福岡市内で保険外交員として働く女性、石橋佳乃。鄙びた町の理容室の娘でありながら、気位が高く、友達の前でついつい老舗旅館の御曹司と付き合っていると自慢してしまいます。しかし、その彼には全く相手にされず、出会い系サイトで知り合った土木作業員にお金を払わせ、会うことを承諾していたんですねぇ。

そして、ある夜、偶然が重なり、土木作業員・清水祐一に殺されてしまいます(まぁ、身から出た錆、だったとは思いますが)。

乾太郎さんの評価:

これだけの長編作品を、苦もなく最後まで読了させてしまう著者の筆力は並大抵のもでのではない。文体は決して大袈裟なものではない。かと言って、軽いわけでもない。実に自然で流れるような文体だ。会話文に多用される長崎弁も、地元出身者ならではのこだわりがあっていい。

物語は、平面地図を見事な表現で立体化させた、霊的噂の絶えない峠の描写から始まる。母に捨てられ、祖父母とひっそりと暮らしてきたた土木作業員・清水祐一が、携帯サイトで知り合った保険外交員・石橋佳乃を殺害したのだ。そんな事情も知らずに三か月ぶりにメールを送った紳士服量販店店員・馬込光代は、空虚で孤独な毎日に終止符を打つために、躊躇しつつも殺人犯となった祐一を受け入れる。

上記の三人を軸に物語は展開するのだが、その他の登場人物(例えば祐一を捨てた母親や祖父母、佐賀市内で一緒に暮らす光代の双子の妹など)の緻密な描写には、この作家の非凡さが余すところなく表れていると思う。

らむさんの評価:

悪人は映画で妻夫木智さんが出演するということで観ましたが、面白かったので小説も読んでみました。文章の情景や説明などがちょっと読んでいて想像しにくいところもあったので読むのに時間がかかってしまったのが残念でした。場所の情景を表現するのがもう少し分かりやすかったら良かったと思います。でも、人物の心理描写はとても良かったです。○○するようにというような例えの表現が多く使われていて、読んでいる方も登場人物の気持ちを想像しやすかったです。悪人は出会い系で知り合った女性を殺してしまい、これまた出会い系サイトで知り合った女性と逃亡生活をする内容なんですが、被害者の家族と被疑者の家族の苦悩がリアルに描かれた作品で、そこはすごいと思いました。被害者の家族は殺された娘を想い悲しみ、犯人を憎む。被疑者の家族はどうして身内が犯罪を犯してしまったのかと驚き、マスコミの躊躇のない質問に苦しむという様子が印象的でした。最後まで読んでみて、悪人という小説は一度読んだだけでは全てを理解するのが難しい、深い内容の小説でした。

たまさんの評価:

実際の都市である福岡市や佐賀の三瀬峠などが舞台で、個人的に地元なので地名が出てくるたびにああ、あそこかと現実味がありました。

祖母と二人暮らしをする土木作業員の祐一と佐賀のアパートで二人暮らしをしている紳士服店に勤める光代が主人公で、地方都市に住むうつうつとした現実感が漂う感じで、二人は出会い、逃亡へと向かいます。

祐一は出会い系サイトで出会った佳乃を殺した罪で捕まります。保険外交員の佳乃は祐一を退屈しのぎの相手と軽視し、思いを一方的に寄せるお坊ちゃん大学生の増尾は佳乃を見下しているという関係性です。一番印象に残ったシーンは佳乃の父佳男が増尾を峠で佳乃を車から置き去りにしたことを知り、増尾に会いに行き、殴られ入院し、それを面白おかしく仲間達に話している所に「そうやってずっと人のこと笑っていけばよか」という場面です。佳男にとってはかわいい娘であり、祐一にとってはひどい女であるという。段々と話が進むにつれ、犯人が誰なのかということよりも、「悪人」って結局誰のことだったの?誰しもが人間いろんな面を持っていて、誰もが悪人でもあり善人でもあるのか?余韻が残る作品です。

こころさんの評価:

悪人が必ずしも裁かれるわけではないのだろう、いつ誰がこういう状況におちいっても仕方ないという恐怖ににた感情を抱いた。こういう本当に悪人としかいいようのない人達はこの世界にも普通にたくさんいて、でもそういうたちはうまくやっていたり、なんらかの理由で社会的に強者だったりするから、裁かれたりはしない。だから、誰もがこうなる選択肢をもっているのであろうと怖くなった。だが、少しづつ少しづつ希望に向かっていって歩いていっているような感覚も読みながら増していくので、何とも言えない不思議な読後感だった。あえて言うなら「スゴイ!」としか言えないような感覚だったように思う。

また、馬鹿にされてたまるか!というある登場人物のセリフが非常に強くこころに残った。悪人たちと戦っていくには、やはりこういう精神的に不屈であることが正解なんだろうなと感じられたからである。彼女のように、強くなりたいものだなと、心を強く揺さぶられた。

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