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私の男

私の男

私の男

桜庭一樹

2008年度本屋大賞部門
第9位

クチコミ( 4

落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

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「私の男」 の評価/クチコミ

弥生さんの評価:

私がこの本を知ったのは、映画パンフレットがきっかけでした。

内容が気になったものの、邦画を観たくても観られない事情がある自身は図書館で原作を借りる事にしましたが、既に先約がいくつも埋まっている状態で、実際に読めたのは数ヶ月も経ってからでした。

頁を開いてまず惹かれたのが目次タイトル、そして時系列を遡っていくストーリー。

本文中にも登場するフレーズ「優雅」な感じがこの小説全体に拡がっていて、最後までスルスルと入り込んでいけました。

どこか危なっかしく、どこか寂しげで“くらくらする”とも“ふらふらする”とも言える、身体が痺れるような奇妙な感覚を抱きながら頁をめくっていったのを今でも覚えています。ストーリー、雰囲気、キャラクター、台詞…そのひとつひとつ全てに酔っていたのかもしれません。

内容は言うまでもないのですが、私自身が最も気に入っているのはこの単行本の表紙です。

単行本は二種類あるのですが、私は「カップル」という絵画が使われている方がこのストーリーにピッタリで「よくぞ、見つけた」と唸った程。

読み終えて図書館へ返した後もその絵画がいつまでも忘れられず、わざわざ同じ単行本を買い求めた挙句、我が家でそれこそ本物の絵画のように立てて飾っています。

るんださんの評価:

本を手に取っての第一印象は象徴的な表紙だな、ということ。

話題になってしばらく経ってから読んだので、父と子の話しだとは知っていました。

また、桜庭一樹氏の他の著書もいくつか読んでいるので「ミステリー」は含まれていると予想しながら読み始めます。

この作品はミステリーに重きを置くよりも、父と主人公、そして周囲の人間が繰りなす話しです。

特に父と主人公の関係が大きく話を進めていきます。

近親相姦、禁忌、といったものに挑戦しているとも見れる作品です。

殺人の仕方も最後を思うと、罪が大きいと感じます。

また、この罪を大きく感じさせる自然環境の描写もリアルです。

桜庭氏の書く登場人物には(例外もありますが)大きく目立つ特徴があります。

名前に見えない、名前です。

戸籍として登録することはできますが、苗字と合わさると悪意を感じさせるものが付けられることが多々あります。

しかし、それが話しのカギを握っていることもあるので、読了してそういう意味だったのか、と分かることも。

全体的に丁寧な本ですが、好意的に受け止める人と、途中で読むのを止める人がいる本…つまり読む人を少なからず選ぶ本だと思います。

私の男さんの評価:

初めて手に取った桜庭作品。

独特の世界観にただただ引き込まれてしまいました。

この物語を一言で言うなら、「お父さん」と「娘」のどこかいびつで屈折した愛憎物語。

けれどそんな単純なものでは全くないことは、読んでいただければわかります。

話のはじまりは娘が結婚式をあげる「現在」。

娘の視点で、男手ひとつで育ててくれた父からの巣立ちが描かれます。

そこから、お父さんの視点であったり、2人に関わる第三者の視点であったりと時代と場面をかえながら、

物語は2人が出会った「過去」に遡っていきます。

時には本当に仲良しな普通の親子に見えますが、時にはなぜか「男女」に見える2人の関係。

その描き方が異様に生々しく、また2人には2人だけの世界、誰も入り込めない世界があるのだということが読み進めるうちにヒシヒシと伝わってきます。

そして終盤。

ついに2人のいびつな関係の原点までたどり着いた時、私は衝撃のあまり悪寒が走りました。

人と人を結びつける絆というのは、場合によっては恐怖すら感じるものなのかもしれません。

正直、好き嫌いの分かれる作品だと思いますが、怖くて美しい物語です。

ぐらんさんの評価:

養父と娘による近親相姦の記憶を時系列を逆にしてたどっていく話。

非常にえげつない話なので、楽しく明るい読書経験を求めている方は読まない方がいいです。読む人の心にイヤーなものを生まれさせる本です。湿っぽい文体でじわじわと、読者を攻めるお話です。

しかしつまらないというわけではありません。他人の人生を出歯亀しているような背徳的な面白さがありました。こういう物語に嫌悪感を感じる人も多いでしょうが、明るいばかりが物語じゃない、そう思わせてくれる小説でした。

養父は本物の最低男なのですが、どことなく色気があってモテるのも納得してしまいました。なんでしょうね、あんなに醜い話なのに登場人物を憎めないのです。それがこの作品の優れたところですね。

共感はつゆほどもできませんが、こういうものもエンタメですね。「やってはいけないこと」を物語に没入して疑似体験するという面白さがあります。人は選びますが、優れた文学作品だと思います。

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