本屋大賞.com

全レビュー・口コミ件数:341件

本屋大賞に特化した書籍(本・小説)の口コミ・レビュー・ランキング【非公認】ファンサイトです。歴代の本屋大賞受賞書籍や、著者の関連書籍をデータベース化しています。各種ランキング機能により、読者から実際に評価の高い書籍や、おすすめの書籍を簡単に見つけることが出来ます。

あるてま

あるてま

『想像ラジオ』は東日本大震災の津波に巻き込まれた一人の男性が、電信柱に宙吊りになったまま、想像上のラジオ放送を繰り広げるという奇抜な設定の中編小説です。

彼は最初、自分自身についての物語を語ることからラジオ放送を開始します。そして途中から、彼と同じように津波の被害を受けた被災者からの投稿を受けたり、彼の心配をする家族からのメッセージを受信したりしながら、想像上のラジオ放送を続けるのです。

作品のテーマは東日本大震災に関するもので、重たい内容となっています。しかし、作品の語り口はラジオDJ風の軽いもので、読み進めやすい言葉から作品は構成されています。

この作品は、ややもすれば他人の不幸をネタにしていると批判されることもあるのですが、作者はあくまで被災者・弱者側の視点に立って、この震災の意味について真摯に考えぬいています。

残念ながら当作品は芥川賞を逃した作品ですが、長らく執筆活動から遠ざかっていた、いとうせいこう氏の復帰作となっています。

この『想像ラジオ』を読み進めるうちに、思い通りにならない現実に対して絶望せずに積極的な関わりを放棄しようとしない主人公の姿が、執筆活動を本格的に再開した、いとうせいこう氏の姿に重なって見えてきて、不思議な暖かみのある気持ちを抱くことになるのです。

『想像ラジオ』は悲劇的な現実に対しても絶望してはならないと教えてくれる、不思議な作品となってます。

2015年1月23日

受賞年度別

著者別