ゆず
とある中学校で起こった生徒の転落死。そこから露呈してくるイジメ問題と保護者や教師の苦悩…。近年頻繁にTVから聞こえてくる内容ではありますが、物語はそこから更に深まっていきます。
どこからがイジメで、誰が加害者で、何が原因なのか。友達だからこそ起こる悲劇もあれば、イジメ加害者の親だからこそ逃げ出したい現実もある。読み進めていると、この物語の閉塞感に息が詰まって仕方がなかったです。
読み始めは確かにイジメとその加害者に対する嫌悪感で一杯だったはずなのに、いつの間にか加害者側にも同情している自分がいました。「私だったらこの状況どうしただろう?」「私がもし被害者の友達だったら」「もし加害者の親だったら」「教師だったら、事が起こる前に何かをしてあげることが出来ただろうか?」考えても考えても答えが出ない、非常に難しく悲しい問題であると感じました。
勿論これは物語ですが、日本のどこかで今現在登場人物と同じ悩みを抱えている人がきっといると断言できるくらい、現実的な問題提起がされています。
娯楽要素もないし、後味も決して良くはありません。
それでも一度読んでおいて損はない小説です。
特にお子さんをお持ちの方、教職の方には一つの最悪な未来予想図として、根深いイジメ問題の予防と対策に役立てることができるのではないかと思います。
2015年5月31日