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幸四郎

幸四郎

小川洋子は、同世代の作家として、今でも読み続けている作家の一人である。

彼女の透明感のある伸びやかで柔らかな文章は、この作品でも余すところなく披瀝されていると思う。

母子家庭に育った朋子は、経済的余裕のない母親の許を離れ、芦屋の叔母夫婦の家から中学に通うことになる。

子供から大人へ、少女から女へ、成長を遂げようとする一人の少女の目を通して、1972年という年を鮮やかに蘇らせている。

ミュンヘン五輪で金メダルを目指す日本男子バレーボールチームの熱戦を熱烈に応援したり、その五輪中に起きたイスラエル人選手団虐殺事件に心痛めたり、好きだった川端康成の逗子での自殺のニュースに震撼したり、私のような年代の人間にとっては本当に懐かしい出来事ばかりが描写されていて、いちいち頷きながら読んでしまった。

激しく揺れ動く外界に世の儚さを思い知ったり、成長し切っていない自分の未熟さに気づかされたり、あの時代の若者が感じるであろう人間的懊悩を、淡々とした筆致で見事に描き切っていると思う。

齢を重ねるにつれ、ますます筆が冴えてきているようだ。

2015年6月27日

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